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二席

人材育成の考え方

−沖縄の観光産業をケースとして−

 

小濱哲

 

はじめに

観光産業とりわけホテル業界における人材不足は慢性的なものになってきた。ホテルは空間と人的サービスを提供して、その付加価値を対価とするゆえに、産業としては高度に高度に労働集約的な業種といえる。最近ではOA化の進展にともない、バック部門における経理や企画などの仕事は、通常の企業並に合理化がすすんでいる。しかし、直接人とふれ合うフロント部門では、人員を削減するような合理化は、なかなか受け入れられない。人を減らすことは、サービスの低下を招きかねないからである。
沖縄はここを訪れた人に喜んで帰って欲しいと望んでいる。少なくとも不快な思いで那覇空港から飛行機に乗って欲しくはない。沖縄の自然や文化は素晴らしくその価値は不偏性を持っているが、だからといって沖縄の評価が常に高いわけではない。観光事業の役割は、人々の旅の手伝いをすることであり、ホテル業ももちろんその一端を担うわけであるが、その対応如何によって、旅の印象もかわってしまう。
ホスピタリティーマインドに欠ける対応は、その施設が批判されると同時に、旅全体がネガテイブに評価され、沖縄が非難されることにつながる。個々の観光事業者は、このような意味で、観光者に対して責任を持っているのであり、安易に人手を減らすことは、沖縄のイメージを悪くすることにつながりかねない。
ここでは沖縄県をケーススタディーとして、観光・リゾート地における雇用の構造的問題を考えることを目的とする。次に地域経済効果の内、雇用効果について実証的調査研究を行い、雇用効果が小さくないことを示した後に、地域における人材育成が必要であることを示す。一般に観光・リゾート地では雇用効果に関しては次のような議論がある。
・ホテルを誘致したが、地元から期待通りの雇用がなされていない。
・地元出身者が管理職になりにくい。
・特に本土系資本では本土からの人材が優先されている。
これらについて、各ホテルの実態を調査するとともに、沖縄県での雇用状況が全国的にどのような水準であるのかを検証する。これらを通して行政、民間、教育機関などいわゆる産官学がそれぞれどのような役割を分担すべきかについて考察する。

 

1. 人材育成問題の構造的要因

(1)人材育成問題の構造
沖縄における人材育成の問題点は、図1−1に示すように、労働需要側の課題と人材供給側の課題に分けられ、次のように5つの段階として整理される。
?企業における労働需要確保の課題
観光産業へ就職しようとする人あるいは従業員における問題としては、観光産業への関心の低さからくる人材確保の難しさや、一旦就職してからの離職率の高さに解決すべき課題がある。

 

 

 

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